石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その215

「もう、どんどんモノが上がっているわ。

この前は珈琲豆が同じ値段だと思ったら、内容量が500gが350gになっていて、今度は気に入って使ってたアメリカの柔軟剤が1.5倍近くも上がってるのよ。

もう買えないわよ。」

「しょうがないでしょ、コロナで輸送費はバカ上がってるし、戦争でロシアのエネルギー関連資源は不足し出してるし、インフレ材料ばかりだからなあ。

そこに円安が拍車をかけてる。」

「能書きはいいのよ、どうすればいいの。

あ、そうだ、あなたの収入が上がればいいのよね。

そうだそうだ、ガンバレー!」

「なに言ってやがる。」

「少しはやる気出したら?」

「こいつ・・・。」

一般の家庭もかなり大変になってきていますが、我々の業界はどう推移しているのでしょう。

【奮闘努力はまだまだこれから】

2月を決算期とする企業の中には、業績を黒字に転換した復調企業がいくつか見られました。

しかし、復調要因をみると、withコロナが進む海外店舗の海外事業や持ち帰りの転換(代行サービスの導入等)の業績がうまくいったところばかりで、従来の営業が好転したところはほとんど見当たりません。

あえて言うならば、郊外型の朝昼営業が新型コロナの悪影響が少なかった(時短がほとんどない)、コメダ珈琲等のカフェ業態やFF業態ぐらいのものです。

GW を迎え、各地の人出は、堰を切ったように増加して、マスコミはやんやと盛り上げていますが、私の眉間にはしわが増えております。

都心部の店舗の売上は大小かかわらず、せいぜいコロナ前の6~7割程度にしか戻っておらず、郊外組も夜型の店舗は同様の推移です。

まだまだ、工夫や努力・我慢が必要で安心はできません。

コロナ禍が落ち着きを見せ始めてきたものの、こんな時にウクライナ侵攻が長期化の様相を見せ始めました。

改めて痛感したのは、今の社会は「資本主義」ではなく「資源主義」になってしまっているということです。

こうなると日本は弱い。

それが証拠にあっという間に円の貨幣価値は下がってしまい、20年ぶりの円安(130円)が更に進む気配です。

日銀総裁は全体的にはマイナスではないと話して、今の政策をしばらく続けるようです。

確かにプラスの企業も多くあるようですが、好調なのは、商社や鉄鋼等のB to Bの業種であり、彼らのように簡単に価格転嫁できないB to Cの業種はもろに原価を圧迫してきています。

耐えられない企業は目先商品の減量や値上げに踏み切り始めました。

経済アナリストの中には150円の円安の進み方を予想する方も少なくありません。

そうなると大きなインフレが起こるのではないかと考えられます。

値上げは、我々の業界が最後の方になってしまうのは、過去からの経験上も明らかです。

消費者であるお客様が〈仕方がないよね〉という空気を持ち始めたタイミングを掴んで価格改定をしないと、大きなしっぺ返しを受けることになります。

大手チェーンの中にはワタミのように“ここがチャンス”と見たのか値下げに踏み込む企業も現れているのは苦々しい限りですが、我々はスケールメリットを発揮して同じことができる立場ではありません。

上げ方や時期を充分考慮することと、新商品で高めの価格でも納得していただくものを開発すること、今の材料の代替食材の選定などを今からでも遅くありません、始めてください。

日本より先に急速にインフレが進んでいるアメリカからのニュースで〈高級寿司店がコース料理10万円を13万円に値上げ(マサという店)〉なんていうのがありましたが、くれぐれも安易な上げ方はなさらないでくださいね。

負けないでください。

ではまた。