KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』  Vol.118

 

8月を迎え、うだるような暑さが続いています。

顧問店の社長と電話で話しましたが、山梨の社長は「35度は当たり前、連日37度を超えていて、体温より高い日ばかりですよ。

もう笑うしかないですね」。

新潟の社長は「39度を超えました。

街は人がいなくてガラガラ、出だしの売上は前年比35%です。

我々には協力金もないし、後3ヶ月が限界です」。

自然にはどうあがいてもかないませんが、そこにコロナ禍があるわけですから唸るしかありません。

東京では異常な暑さの中、コロナ感染者は5000人を超え、「緊急事態宣言」(酒類の提供禁止・時短)が8月末日までに延長となりました。

宣言は6都府県に拡大され、5道府県には〈まん延防止措置〉が発令されました。

もうこうなると飲食店はお手上げで、要請に従わない店が増えていくのは当然かもしれませんね。

デパートや駅ビル、その他の施設は対象外で飲食店だけが狙い撃ちされている現状では我慢できなくなってしまう店が現れるのは仕方がないとも言えます。

要請に従わず、通常営業していて繁盛している店があるのですから余計でしょう。

都の調査によると、約1000件の店は通常営業に踏み切っているようです。

再延長で「もう限界」とお酒の提供を再開した店も多いのではないでしょう。

様子を見に視察を数件しましたが、罰金を払ってでも売上を稼がないと生き残れない店の「いらっしゃいませ」が助けを求める叫びに聞こえて、何だか切なくなりました。

そんな彼らに酷かもしれませんが、ちょっと気がついたことがあります。

夕方早めの時間から開いていた店に入った時のことです。

接客はとても丁寧で、席に着くときにハンカチを誤って落とした私に対して、今時の配慮をした応対をしてくれました。

「お客様、そちらにハンカチを落とされましたよ」

「あ、ありがとう」

「こんな時ですから私共が拾うわけにいきませんから、申し訳ありません」

「いやいや、ありがとうね」と、まあこんな感じです。

そんな彼がその後、豹変しました。

どうやら、遅刻したらしい若いスタッフが、慌てて店に入った来たのですが、そのスタッフが「おはようございます」と声をかけた瞬間、

「てめえ、何やってんだ、早く着替えろ、バッカ野郎!ったくよぉ。」と罵倒したのです。

私の心は砕け散りました。

あれだけ優しく紳士的だった先ほどの彼の印象は、本性を隠した狼なんだと感じて、その後は、彼が食卓にサービスに来るたびに、何だか嫌な気持ちになってしまいました。

そうなると、先ほどまでの同情の気持ちも薄らいでしまいます。

直接的にお客様と接するときの言葉遣いは確かに重要ですが、間接的にお客様に聞こえる言葉遣いも重要であるという認識を忘れてはいけません。

店内で従業員を罵倒する声が聞こえれば、お客様は不快に感じるでしょうし、そんな店にまた行きたいとは思わないでしょう。

店は〈舞台〉、そこで働くスタッフは〈役者〉と考えると、演技はやり切っていただかないとファンは増えていきませんね。

ホント、たいへんですが何とか耐えましょう。お客様の笑顔を創りましょう。

ではまた。