「出来映え」の重要性 (1)

 今回からはサービスマンの行動における「出来映え」の重要性についてお話して参ります。
 皆さんのお店には何人のホールスタッフがいますか?お店の規模によって様々だと思いますが、その中で、誰もが認める優秀なスタッフ、または優秀だとは言えないスタッフがいるはずです。
  さてその差はどこにあるのでしょうか。経験年数、機転の利き方、人間性、仕事への向き不向き等、様々な理由が考えられますが、それがすべてではありません。優秀なスタッフが多いと言われるようなお店には一つ一つの仕事に関する「出来映え」というものが明確に存在し、各スタッフに周知徹底されている場合が多いのです。
  「出来映え」とは言い換えると行動基準とでも言いましょうか、ひとつの仕事に対して、何をどのようにしたら「良い」のかという状態を明確にしたものです。これがないとおのおのの主観や能力の違いによって同じ仕事にもバラツキが生じてしまうのです。「出来映え」はより具体的なものでなくては全く意味がありません。
 例えば、「お客様の退店後は什器を下げ、テーブルをきれいにする」
 これは「出来映え」にはなりません。なぜならば、①どのように下げるのか、②きれいとはどのような状態なのか、③テーブルとはどこを指すのかが具体的ではないからです。
この例を正しく「出来映え」とするならば、「お客様の退店後は、お客様がテーブルから○メートル離れた後、両手で素早く什器をトレーに乗せて下げ、大きいゴミやクズを取り除き、ダスターを手の平サイズにして効率よくテーブルの上とふちを拭きあげ、ゴミ、水滴が全くない状態にする。また、カスターセットを全て十分に補充された状態にし、イス、テーブルの下、テーブルの周辺もゴミ、水滴など全くない状態にする」
「出来映え」とは、上記のようにより具体的でなければならないのです。自店の「きれい」とはどういう状態なのか、またどこに注意し、どのように行うのかが明確であれば、スタッフはその通りに実践するでしょうし、抜け落ちが出てきたとしても、修正すべき箇所が整理しやすくなるはずです。また、スタッフ同士の「きれい」の個人差をなくすことができるので、個人の能力に頼らず常に一定の仕事をさせることができます。
 違う例を挙げると、「ホールリーダーは全体をチェックし、指示を与え、店長に逐次報告をしなければならない」
 これも非常に抽象的な定義です。ホールリーダーの「出来映え」とするならば、「全体のオペレーションの流れを常に把握して、適切な問題発見ができ、それに対して適宜必要な指示、フォロー、教育が正しく行える。また、店の運営について店長に適切な改善提案と実行ができる」というように何をどのようにしなければならないかを明確にしなければなりません。もちろん、この定義の上に、やるべき項目が枝葉としてあるのは言うまでもありませんが、この「出来映え」すら明確でないお店が多々あるのも確かです。
 「出来映え」は誰もが分かるよう具体的に定め、そしてそれを遂行させるためのチェック機能を作り上げることがとても大切です。
 次回はそのチェック機能についてお話します。