「チームワーク」と「コンビネーション」(1)

飲食業は「人」が作り出すアナログ的な商売です。「人」のやる気や技術がそのまま料理や接客に表れ、お店の全体的な評価につながっていきます。味付け、盛り付け、笑顔、姿勢、目配り・・・それらひとつひとつがお店の価値をつくっていくのです。また、お店の規模にもよりますが、「人」が一人で営業をすることはあまりなく、複数の「人」によってお客様のおもてなしにあたることが多いのです。大規模なお店になるとホール部門だけでも10人から20人の体制で営業することもままあることです。
今回からはその複数の人達がホール業務の営業体制を敷く中で大切なポイントについてお話していこうと思います。テーマは「チームワーク」と「コンビネーション」についてです。

飲食店のホール業務は多岐に渡ります。お出迎え、オーダーリング、料理提供、お客様のお世話(中間サービス)、後片付け、お会計など幅広い業務を行わなければなりません。小規模なお店では一人の人がそれら全てを担当することもありますが、一般的に20席を超えるお店の場合には2人以上のホール担当者が必要です。
ピークタイムではお客様10名に対して接客担当者が最低一人という一般的な考え方にもとづいていますが、その際、仕事の分担やゾーニング(エリアを割り当てて分担すること)を行い、効率良くオペレーションすることが必要になってきます。実は「チームワーク」を考えるとき、この仕事の内容やエリア等で決定する責任範囲の設定が密接に関わってくるのです。
このことについてはまた詳しくお話しすることにして、そもそも、「チームワーク」とはどういうことなのかを知らねばなりません。イメージで言うと「一致団結」や「結束」「仲が良い」などを指すような感じがする方も多いと思いますが、本来の意味は少し違います。

「チームワーク」とは

同じ目的を持つ集団の各個人がそれぞれの役割と責任を明確にして、それぞれがそれを100%全うすることと定義できます。

スポーツの分野でよく「チームワーク」という言葉が使われますが、全く上記の定義が当てはまります。例えば、野球を例に取ると、「同じ目的」とは「チームの勝利」ということで異論はないはずです。「それぞれの役割と責任を明確に」とはポジションや打順を設定することです。ピッチャーがいてキャッチャーがいる。内野手がいて外野手がいる。また、1番から9番までの打順ではそれぞれに役割が違います。塁に出るべき打順、ランナーを進めるべき打順、ランナーを帰すべき打順と期待される仕事はそれぞれ違うのです。「100%全うする」とは、例えば練習で野手がピッチャーの投球練習をすることはまずありません。同様にピッチャーや2番打者が長打を打つ練習をしたりすることはほとんどないはずです。試合でももちろん、内野手が外野の守備位置を守ったりしません。それぞれが自身の役割を理解し、十分に練習を重ね、それぞれのポジションでやるべきことを十分に発揮する。これが結果として強いチーム、勝利を掴めるチームをつくることにつながります。
飲食店の経営について考えるときにもこのことが当てはまります。
洗い場の担当、刺身の担当、焼き場の担当、接客担当、デシャップ担当、店長や経営者に至るまで「お客様の満足と感動」のためにそれぞれの役割と責任を全うすることです。もちろん、ホールオペレーションだけに限っても同じことが言えます。

次回はこの「チームワーク」をいかにしてオペレーションの中に落とし込み、根付かせていくかについてお話をしていきます。