トレーニング(1)

 今回から店舗運営業務において最も重要な業務のひとつである「トレーニング」についてお話してまいります。
 さて、人材教育の重要性は様々な仕事において論じられますが、飲食業においても大変重要なテーマです。前回のモチベーションの中でもお話しましたが、飲食店では来店された全てのお客様に常に高い付加価値を提供していくために、現場の最前線で働くスタッフの力量が常に問われるからです。スタッフが直接作った料理や、スタッフのサービスによってお客様のお店に対する評価が決まってしまいます。お店のコンセプトや経営理念、方針等も大切ですが、現場のスタッフの調理やサービスのスキル、作業レベルをモチベーションとともに向上し続けなければなりません。「人」の力がこれほど作用する仕事はないのですから、スタッフをどれくらい上手にトレーニングできるかがお店の評価を決めるといっても過言ではありません。
今回はトレーニングを行なうにあたっての「トレーナーの心得」についてお話します。
 トレーニングを円滑に行うためには、まずその土台となる環境を作らなければなりません。トレー
ニー(教育を受ける者)が教えられたことを素直にまたは積極的に吸収しようという気持ちにさせることが重要です。

<トレーナーの心得3か条> 
1. トレーニーに対して情熱を持ってトレーニングする
2. トレーニーにとって質問しやすい雰囲気をつくる
3. トレーニーの立場に立って教える

 トレーニーが自ら学ぼうとする姿勢にはトレーナーの気持ちや姿勢が強く影響します。1についてはトレーナー自身が、トレーニーに仕事を覚えてほしいというような一生懸命な姿勢がトレーニー自身の気持ちを鼓舞するということです。トレーナーにやる気がないように感じられれば、トレーニーも一生懸命に覚えようという気にはなかなかなりません。また、例えば皿洗いであったり、バッシングのような比較的簡単な仕事でも、重要な仕事なのだと態度で示す効果もあります。
2については一方通行で教えてもなかなか効果がないということです。私が現場でトレーニングする際には、「解らないことがあったら、いつでも質問をしてくださいね」と必ず前置きをします。また、トレーナーにとってはもうマスターしている仕事であっても「君ならこういう場合どうする?」「君がお客様ならどういう風にしてほしい?」などと質問をしてトレーニーの考え方を引き出したりして、ただ黙って聞いているだけ、または見ているだけの状況をなるべく作らないように心がけます。参加させることで安心感や積極性を生むようにこちらから働きかけることが重要です。
3も2の心得と似ていますが、自分にはできるがトレーニーにはまだできないという当たり前のことを忘れないということです。仕事の習熟度には個人差がありますし、トレーニーがなかなかできないことに対していらだったり、見下したりするようなことをすれば、積極的に学ぼうとする気持ちを削いでしまいます。トレーニーがしっかりと仕事をできるようになるための援助をしているという姿勢でいれば、必ずトレーニーもそれに応えようとするものです。
いかがでしたでしょうか。トレーナーは重要な責務を負っているという緊張感とトレーニーに対する愛情を持って接っすることを忘れてはいけません。
次回は基本的なトレーニングの流れの手法についてお話してまいります。