コラム

井上奈々子の『食の豆々知識』

2014年2月11日

Vol.116 サケ弁

「サケ弁」がなくなる。

そんな話題が、広がっています。

消費者庁は、偽装表示問題が相次いだことを受け、昨年末、ガイドライン案を作成しました。

そこに、「サーモントラウト」を「サケ」「サーモン」と表示してはならない、と記されていたことに、サーモントラウトを使用した「サケ弁当」はどう表示したらよいのかなど、困惑が広がり、外食現場では、見直しを求める意見が相次いでいました。

森雅子消費者行政担当相は、2月7日、「サケ弁当と書くだけなら、問題ない」との見解を示しました。

ガイドライン案の表記に誤解を招いたとし、案を見直す方針だそうです。

消費者庁は、このガイドラインを、意見交換会などでよせられた意見を参考に検討をすすめ、今月中にも完成させるとか。

とりあえずは、今まで通り、安価なサケ弁は、なくならないようで、ちょっと安心!?

ということで、今回は、「サケ」について。

●紅鮭と銀鮭、秋鮭はサケ?

サケは、一般に「シロザケ」のことを言います。

秋に産卵のために戻ってくるシロザケは、「秋味(アキアジ)」「秋鮭(アキザケ)」とも呼ばれます。

また、春から夏に捕獲される「時不知(トキシラズ)」や、成熟途中で目と口の間の長さが短い「目近(メジカ)」、更に高価なサケとしても有名な「鮭児(ケイジ)」もすべて、シロザケです。

しかし、「銀鮭(ギンザケ)」、「紅鮭(ベニザケ)」は、シロザケとは、種類が異なります。

しかも、昔は、銀ます、紅ますと呼ばれていました。高級感をだすために、名前が変わったようです。
ん?じゃあ、ギンザケ、ベニザケは、サケじゃないの?となると難しいところで。

シロザケじゃないですが、サケの一種です。

「さけ・ます」類は、川で生まれて海に降りる降海型と、淡水で一生を過ごす陸封型に分けられます。

降海型はサケ、陸封型はマスと、名称をつけることが多いようですが、昔マスと呼ばれていた、ベニザケもギンザケは、海で回遊しています…。

あまり、呼び名では、区別することができないんですよね。

難しいので、更に難しい続きにまいりましょう(笑)。

●さて問題のサーモントラウトは、じゃあなに?

英語では、上記でいう陸封型をトラウトtrout(日本語和訳はマス)、降海型をサーモンsalmon(日本語和訳はサケ)と呼び、区別しています。

では、サーモントラウトは?サケマス?

よくわからないですね(笑)。

日本の食品業界では、淡水に生息するニジマスrainbow troutを海で養殖し、通常よりも大きく育ったものをサーモントラウトと呼んでいるようです。

海で育っているので、川魚特有のクセもありませんし、サケと同じように身も赤く、白身魚のニジマスのイメージはありません。

確かに、種でいえば、サケではありませんが、ニジマスという方が、イメージはかけ離れています。

上記のベニザケ、ギンザケをサケではないとするのであれば、シロザケではないサーモントラウトもサケではありませんが、ベニザケ、ギンザケはサケと呼んでもいいとするのであれば、サーモントラウトも問題ないような気もします。

安価でサケ弁が食べられるのは、このトラウトサーモンがあるからであり、トラウトサーモン弁当と名を変え、サケ弁が消えていくのは、さびしい気がしますから、今回のこの報道は、よかったと思いますが、いわゆる昔ながらの日本のサケ弁は、シロザケだということもわかっていてほしいものです。

●おまけ。なんでニジマスは白身なのに、同じ仲間のサケは赤身なの?

実は、よく間違われますが、サケは、赤身魚ではありません。

白身魚なんです。

マグロなどの赤身の成分とは違い、サケの赤身は、「アスタキサンチン」という色素により、赤くなっているだけなのです。

これは、カニやエビの甲羅が赤くなるのと一緒。

ちなみに、このアスタキサンチン、カロテノイドの一種で、強い抗酸化力のため、動脈硬化、ガンなどの生活習慣病予防、老化、日焼けによるしみそばかすの改善につながるとされています。

老化、日焼けによるしみそばかすの改善…。

サケのように、アスタキサンチンを保有する力があればいいですね…。

ところで、「サケ」と「シャケ」どちらが正しいか。

これは、江戸っ子が、「さしすせそ」がうまく言えなかったから、とか、アイヌ語から来ているなどの方言説や、調理前は「サケ」、加工されたものが「シャケ」だとか、シロザケは「シャケ」だとか、いろいろな説があります。

今回は、「サケ」が分類からの本当の読み方なので「サケ」で通しましたが、私は、絶対「シャケ弁」派(笑)。

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