コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2023年11月6日

Vol.145 お客様の心を掴む一言の力

11月になって、寒くなるのかと思いきや、東京は、なんと夏日が続くという異常気象で、どうも調子がおかしくなりそうな今日この頃ですね。

まあ、天候はどうにもなりませんが、円安の流れが止まらず、150円超でまだまだ上がりそうなのは、何とかならないものかと思ってしまいます。

日銀の為替介入がありそうだということですが、どこまで効果があるのか、先が思いやられます。

食材の値上がりが続くのは、頭が痛いですね。

また、それよりお客様の消費活動が停滞していくことが懸念されます。

消費税を下げるような思い切った政策でも政府が出してくれればいいのですが、ムリでしょうか。

街を歩いているとホント飲食店が頑張っているのがわかります。

特に繁華街を歩いていると、横から前から声がかかります。

いかがわしい店ではなく、居酒屋が多いのですが、最近は「呼び込み」「誘い」を専門に行い、店から手数料をもらうという、それ専門で稼いでいる方と契約している店も珍しくはありません。

もちろん、店自体が暇な時間はスタッフを表に出して呼び込みを行うのは当たり前になっていますね。

先日も二人で視察がてら、ぶらぶらと街を歩いていると、店の従業員らしき女性から熱心な勧誘を受けました。

「ビールが250円、やきとりも安いですよ。

お二人でゆっくりできますよ。」

がんばるなぁと思いながらも、一通り街を見たかったので、入店せず視察を続けました。

頃良い時間になり、さて、どこかでゆっくりしようかということになったのですが、同行のスタッフが「せっかくですから、頑張って説明してくれた先ほどの店にしましょうよ」というので、その店に向かいました。

到着した店の前には先ほどの彼女はいませんでした。

中をのぞくと7割がたお店は埋まっています。

外で呼び込みをする暇はなくなったのでしょう。

奥の席に案内され、見渡すとなかなか雰囲気も良くゆっくりできそうです。

ほどなく、店頭での彼女が注文を取りにやってきました。

同行スタッフがすかさず、「先ほどのあなたの感じがよかったから戻ってきたんですよ」と声を掛けました。

すると意外な反応です。

彼女は首をかしげています。

「ほら、さっき、店頭で説明してくれたでしょ。」

それでも彼女は覚えていないようで、取りなすつもりで、「まあまぁ、君の影が薄いんじゃないか、いいじゃないか」と言うと、私の言い方が悪かったのでしょう、同行スタッフの機嫌はすっかり悪くなり、「ほんとに俺のこと覚えてないの?10分ぐらい前だよ」と。

これはらちが明かないと思った私は「とりあえず、ビール2つください」と割って入り、彼女には戻ってもらいました。

「おかしいですよね。

あれだけ話して、わざわざ戻ってきたのに覚えてないなんて。」

これがお客様なのです。

店側は多数のお客様と接しています。

すべてのお客様を覚えられないし、ましてや路上で無差別の方に声掛けしていると惰性で説明もしています。 

無理もないのですが、こんなお客様はたくさんいらっしゃいます。

こんな時は昔から言われる“あしらい”サービスが重要なのですが、彼女はまだそこができなかったのです。

ベテランなら、記憶がなくても「そうですよね、先ほどお声をかけた方ですよね。

来てくださって、ありがとうございます」とでも言ったことでしょう。

呼び込みをしていて、どうせ、込み入った話などするわけはありませんから、これで充分です。

そうです、私たちのサービス業は、ほんの小さな気遣いができるかできないか、機転が利くかで、お客様を幸せな気分にできるか機嫌を損ねるかになる仕事なんですね。

ホント、大変ですが頑張りましょう。

お客様の笑顔を創りましょう。

では、また。

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