2024年7月10日
Vol.153 安売りと経営のジレンマに挑む飲食店
こんにちは、7月を迎えました。
遅い梅雨入りとなりましたが、気温は夏真っ盛りの暑さとなり、どうにも過ごしにくい日が続き、調子が狂いますね。
円ドルでは、円安が一段と加速し、円相場が一時1ドル=161円台に突入しました。
食材の高騰がまだまだ続くことは間違いありません。
業界を思うとさらに熱くなってしまいます。
これからの季節は、エアコンを止める節約なんてできない我々の業界はどうやって収益を上げたらいいのか、頭の痛い日々が続きますね。
やはり、価格転嫁を真剣に取り組むべきだと思います。
世界一安い飲食業界と言っても過言ではない日本の飲食店、もうそろそろ安売り(ウチは違うよと言っているあなたのお店が世界から見れば大安売り)脱却を考える時ですね。
でも、大手チェーンから手を付けてくれないと困りますよね。
数社は小幅に値上げをし始めましたが、まだまだ安売りが最善の策だと疑わず運営しているセンスのない企業が多いようです。ため息が出ます。
さて、今回はそんな安売り策満載の大手チェーンの焼肉屋で出会ったお話です。
「ここはクーポンの発行が多くて、一人2枚まで使えるんですよ。
スマホですぐ手に入りますから、やってみてください。」
「ほー、1品毎に少しずつ安いね。」
「抽選もありますよ。
ほら、ミスジが当たりました、390円ですよ!」
「私もやってみよう、あ、カルビが当たった!」
その他にもビールはクーポンを使うと290円です。
早速、ビール2杯とミスジ・カルビを頼むことにしました。
ここまでで1260円です。
なんと安いのでしょう。
外人だったら歓声を上げることでしょう。
ところがここで問題が起きました。
スタッフが来たので内容を告げると彼女はこう言ったのです。
「あ、クーポンは使えますが、抽選で当たったクーポンは一組1枚だけです。」
そんなことはどこにも書いてありません。
店としての気持ちはわかります。
安すぎますから。
しかし、同席者は黙っていませんでした。
「このクーポンには、〔ご本人様のみ一枚ご使用になれます〕と書いてありますよ。
二人がそれぞれ当たったんだから、2品OKなんじゃないの。
まあ、いいけどね。」
同業者としてカスタマーハラスメントにはなりたくないという心理が働いたのでしょう。
彼もクレームとしては言わずに「これじゃ、勘違いする人、たくさんいそうだから本部に報告したほうがいいんじゃない?」と告げたのでした。
彼女は「はい、すいません。
店長に聞いてきます」と応答したのでした。
しばらくして戻ってきた彼女の答えは「店長がお客様の言うとおりにしますということです」でした。
「え、本当!ありがとう。」
同席者の言葉に彼女も笑顔で答え、万事めでたしめでたしとなったわけですが、私としては複雑な気持ちでした。
お客様の気持ちになればうれしい安売りですが、店の経営を知るものとしては気の毒な気分も芽生えるものです。
安売りで、集客を一番に追及する企業が多ければ、個人店にとっては体力勝負を挑まれているわけで、資本主義は弱肉強食だと言われればそれまでですが、我々は工夫と別戦術で負けないことですね。
ホント、大変ですが頑張りましょう。
お客様の笑顔を創りましょう。
では、また。
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