コラム

井上奈々子の『食の豆々知識』

2017年3月7日

Vol.153 麹と発酵

近年、発酵食がブームです。

ブームにのっている訳でもなく、昔から発酵食好きな私ですが、料理教室の生徒さんからの発酵食依頼が多くなり、味噌教室をはじめ、発酵教室もよく開くようになりました。

先日、麹と発酵の第一人者とも言われている、東大農業大学名誉教授 小泉武夫先生の講演会に行くチャンスがあり。

もちろん、ウキウキと勉強しに行ってきました。

今回は、そのレポート。

●麹菌は国菌である!

2006年、日本醸造学会にて、日本の麹は国菌に認定されています。

むか~し昔のこのコラムで、「麹」と「糀」の違いを話したような気もしますが。

「麹」は、中国から来た漢字です。

中国の麹は、麦やコーリャン(高粱 モロコシの一種)を粉砕し、水で溶き、そこに自然界にある菌がつくことでできます。

なので、麦偏。

ちなみに今は、この字を使わず、音から、「曲」という字を使っているようです。

韓国をはじめ、アジア各地で麹はみられるそうですが、米(または麦、豆など)1つ1つにカビがつく散麹(バラコウジ)であるのは、日本だけだそう。

日本の麹の歴史は、奈良時代、神様にささげた米にカビがついていたことから始まります。

江戸時代には、麹屋と呼ばれる、種麹を商売とするお店が存在します。

日本の麹は、米を蒸し、そこに種麹(稲についているものを採取)をつけて米麹をつくります。

麦や豆も一緒。

この米麹は、米に花が咲いたようにカビが生えることから、「糀」。

これは国字、日本人が作った漢字です。

お酒のメーカーは、酒税法で決められているため、「麹」の文字を使用しますが、決まりがない味噌屋は、「糀」を使用することが多いのも、やはり、「日本のもの」だからですかね。

つまり、麹は日本国有のもの。

これが、認められた訳です。

ちなみに、この国菌、2種類あります。

「黄麹菌」と「黒麹菌」。

黄麹菌は、日本酒、みりん、みそなどを作る麹を作る菌で、黒麹菌は、焼酎などを作る菌だそうです。

●やはり味噌はすごかった~!

味噌の健康は、そこら中で言われていますが。

1981年、故平山雄先生(がん学会)は、味噌汁を飲む回数が多い人は、胃がん死亡率が低下するという調査結果を発表。

動物実験では、他のがんにおいても効果がみられている。

また、長崎の被爆医師、故秋月辰一郎先生は、自身、患者、職員に原爆症が発症しなかった原因は、玄米と味噌汁、特に、味噌汁によることが多いと述べている。

これを研究している広島大学名誉教授である 渡邉敦光先生は、身体に入った毒をいち早く出すという効果を味噌に発見。マウスの実験により、免疫力がアップすることも確認している。

この先生は、味噌の塩分摂取の悪影響力よりも、免疫力、がん予防力の効果の必要性も発表しています。

また、この他にも、味噌には肌の保湿やきめを改善する効果があることも発見されているようですし。

こうやって研究結果をみていると、今まで学んできた「~に効く」ということが実感でき、あ~やはり、味噌ってすごいなぁと感動していた私でした。

世界遺産に「和食」が認定されましたが、和食の基礎となるのは一汁三菜。

この中には、お味噌汁と香の物が必ず入り、つまりは発酵食が2つも入っていることになります。

中国をはじめ、他の国では、医食同源について、小さい頃から学び、麹についても勉強しているということですが、現在の日本は皆無に等しい。

こんなにすばらしい食をもっているのに、残念だなぁと思い、少しずつですが、子供たちに伝えていきたいと思う今日この頃です。

ところで、上記の効果は、味噌の熟成度が高いほど、色調が濃いほど高かったそう。

うちに、4年物の神のような味噌が、味噌蔵にいて、ほとんどどす黒く、味噌と思えない状態になっていますが...。

毎日、ちょっとずつなめてみようかな(笑)。

参考

<小泉 武夫>
東京農業大学名誉教授
福島県の酒造家の家に生まれる。専門は、発酵学、食文化論。農学博士。
現在、東京農業大学名誉教授、広島大学大学院、鹿児島大学、石川県立大学、琉球大学客員教授の他、農林水産省政策研究所客員研究員、食料自給率向上推進協議会会長、財団法人発酵文化推進機構理事長、その他多くの役職を兼任する。

今回は、小泉先生の講演会の内容をピックアップしたものです。

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