コラム

たかさきたけしの『社長から見る“黒字社員、赤字社員”』

2017年11月7日

Vol.17 黒字社員を育てる使命感

肌寒い日々が増えてまいりましたが、白熱の年末営業に向かって我々飲食店業界は熱を帯びてまいりました。

皆さんは順調でしょうか。

事業内容にかかわらず、いろいろなお付き合いのある社長から、人材不足の声が聞こえてきます。

「本当は〈人財〉が欲しいけど、人材で十分、人手になれば口が訊けなくてもいいし、笑顔なんて要求したら贅沢ですよ。」

本意ではないでしょうが、そんな言葉を口にする社長もいます。

福利厚生を含め、待遇を改善し、労働環境も法律にそって整備するということを外食大手企業は進めています。

もちろん中小零細の企業とて、工夫を凝らして考えをめぐらせていますね。

その上で毎月、募集費をかけて人材を求めています。

それなのに良い従業員に出会うことはなかなかありません。

赤字社員ばかりが増えてしまった店もあるようです。

なぜそうなるのでしょうか。

視察したいくつかの店を思い浮かべると、この人は大したもんだなあと感心した人の中に外国人が多いことに気がつきました。

そんな折、も次のニュースを聞いた時に、なるほどこのことかなと思いました。

城崎温泉の観光案内所に勤めるアナスタシア・ウィンダラーさんのことです。

彼女はこの温泉の活況をもたらした立役者の一人として、今、注目されているのです。

城崎温泉は蟹のシーズンで1年分を稼ぐという長い歴史を持つ温泉地として地元の方々もそのサイクルで過ごしてきました。

なので、シーズンオフは閑古鳥の鳴く、さびれた場所となるという問題を抱えていました。

その問題を解決すべく街が目を付けたのは外国人観光客の誘致でした。

ところが外国語もしゃべれず、シャイな地元の方々は動きようがありませんでした。

そこで募集を出したところ、アナスタシアさんが応募してきたということです。

米国のアラバマ出身の彼女は、数年前、城崎を観光で訪れ、城崎温泉の風情・人情に本当の日本人を見つけ、どうしてもこの場所に住んでみたいと思ったそうです。

ですから募集を見てすぐに応募したわけです。

仕事を始めた彼女の働きは素晴らしく、訪れた観光客に対しては城崎の魅力を大いにアピールすることはもちろん、お客様が困ったことには私的時間を使ってでも対応し、要望は細かく答える動きをして面倒をみます。

地元の人が知らないことも調べ上げ、誰よりも城崎通だと言われるほどです。

SNSを有効に使い発信にも余念がありません。

訪れた観光客の多くが感謝の声をあげ、その方々も情報を発信するという連鎖が起こったのです。

地元の方々は「閑古鳥が鳴いていたこの街がこんな賑わいのある街になるなんてとても想像できなかった。

ビックリです」と反応しているようです。

もちろん、彼女一人のおかげで急成長したわけではないでしょうが、立役者の一人であることは間違いありません。

りっぱな黒字社員です。

では、どうして彼女は黒字社員になったのでしょうか。

特別に待遇がいいわけではありません。

今でも1ルームのアパートに住み、給料も新人待遇です。

〈城崎の魅力を発見して、好きになった、それを多くの人に知ってもらいたい〉

このことが彼女を突き動かしているのです。

それを自分のミッションとしているのです。

というかミッション(使命)を自分で見つけたのです。

皆さんの社員はミッションを持っているでしょうか。

何をやるべきかをわかって働くのと作業をすることが仕事だと働くのとでは内容が大きく変わってきます。

黒字社員と赤字社員の違いはそこではないでしょうか。

付け加えますが、経営理念をはっきり据えて、それを実現するための実行ミッションを与える(考えさせる)ことは社長の役目ですね。

ではまた。

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