2004年9月1日
Vol.4 五法について
五という数のシリーズも最後の、今回は「五法」についてです。
五法は、「生で食べる」「焼いて食べる」「煮て食べる」「蒸して食べる」「揚げて食べる」の五つの調理法をさします。よく私が講師をしている時に五法について尋ねると、「茹でる」という答えが返ってきたりします。「茹でる」は、「煮る」に入ります。また、「生」という答えがなかなかでてこないこともあります。が、「生」も大切な調理法のひとつです。
「生」とは「非加熱」な調理法であり、「切る」だけでなく、「洗う」「さらす」「漬ける」「混ぜる」「泡立てる」「おろす」「する」…など、すべて、「生」の調理法になります。「洗う」は調理法?と思う方もいらっしゃいますが、鱸などの造りの「洗い」は、暦とした調理法です。また、「凍らせる」のも「生」の調理法です。
残りの「焼く」「煮る」「蒸す」「揚げる」は、「加熱」調理法になりますが、これらは、「乾式加熱」と「湿式加熱」に大別されます。中間体として水を用いるかどうかで分類され、「焼く」「揚げる」は「乾式加熱」、「煮る」「蒸す」は「湿式加熱」ということになります。「乾式加熱」は、加熱温度が120~200℃と高く、温度の保持は困難であり、「湿式加熱」は80~100℃と低く、温度の保持は比較的容易であることが特徴です。つまり、材料を短時間で加熱したいときや、高温で加熱したいときには「乾式加熱」がむき、長時間の加熱が必要なものや、じっくり味を染み込ませていきたいものには「湿式加熱」がむくということになります。しかし、餃子を焼くときのように水を加えたり、肉の大きな塊をローストするときに野菜をしき水蒸気を補ったりするように、乾式加熱でも水の働きを利用することもあります。
ここに例えば茄子があります。塩で軽くもみ、茄子の香りと歯ごたえを楽しむ。これが「生」の調理法。網の上で皮が真っ黒になるまで強火で「焼き」、皮をむく。生の時よりも茄子がぐっと甘くなる。茄子の皮をむき、ひたひたの水で柔らかくなるまで「茹で」、水を切りすりこぎで軽くつぶす。びっくりするほどとろ~んと柔らかくなる。同じく皮をむき、「蒸す」と茹でたときとはまた違った食感になる。茄子のおしりのほうから箸を刺し、丸ごと油で「揚げ」、皮をむく。茄子にこくが加わる。茄子と油の相性がいいのはご存知の通り。このように茄子の形状、味付けは同じでも、調理法により、まったく違った香り、食感、味となるのです。
更に、日本料理のオランダ煮のように、「揚げて」から「煮る」といったことももちろんあります。また、「和えもの」は「生」の調理法になりますが、生のものだけを合わせるのではなく、同じ材料でも生のものと焼いたもの、または揚げたものを組み合わせることにより、また違ったこくや味わいができてきます。
基本は五つの調理法ですが、「生」ひとつとっても調理法がいくつもあるようにそれぞれの調理法は奥が深く、また組み合わせにより更に調理法は増えていきます。そしてこれに、前回お話した五味、五色を組み合わせれば、料理は無限に広がるのです。そう思うと料理人や料理研究家が毎日新しい料理を次から次へと開発しても、限りはないのだなぁと痛切に感じ、また今日も、頂いたたくさんの自家菜園の茄子の山を前に新しい料理を考えるのでした…。
さて、「五という数」シリーズも今回で終わり、次回からは、調味料についての豆々知識をお話していこうと思います。どうぞ、またお付き合い下さいませ。
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