2008年1月7日
Vol.44 蕎麦(そば)2
先日、蕎麦打ち名人、翁達磨の高橋邦弘氏のそば会に参加しました。
機械のような正確さのそば打ちはとても美しく、名人みずから打つ、挽きたて、打ちたて、茹でたての二八そばは、なんだか、気負いすぎない、ほっとするようなおそばでした。
これで、年越しそばは、食べなくてもいいかなと思いながら、大晦日まであと2日。
きっと、そういう訳にもいかないだろうなぁ。
ということで、前回に続き今回も「そば」のこぼれ話。
ちなみに、そば会の会場のとなりには、達磨が描かれた真っ赤なバカでかい特注車「達磨号」。
冷蔵庫、そばうち台が装備されているトラックです。
ぜひ、これにネオンをチカチカさせて、手ぬぐいを頭に巻いた高橋氏に運転してほしい(笑)。
● 「生蕎麦」は、なんと読む?
よく、お蕎麦屋さんののれんに書いてありますね。
「きそば」と読みます。
「き」の字だけがひらがなだったり、逆に漢字だったりすることもあります。
くれぐれも「なまそば」ではありませんから。
ご注意を。
乾麺ではなく、自分のところで生麺を打っているという意味です。
数年前、伊豆に車で旅行した際に、「日本一うまいそば屋」という案内看板が、何十キロも先から点々とあり、つい気になりその案内に進むと、そこには旅行者の長い列が。
これは旨いに違いないと、その小さな、きれいとはいいがたいお店に並ぶこと1時間。
出てきたそばは、どう見ても乾麺を茹でたもの。
う~ん、まぁ、確かにのれんには「生蕎麦」とは書いてなかったけれども…。
● 「ざる」と「せいろ」違いは「のり」?
「ざる」 と「せいろ」 の違いは、器です。
せいろは、蒸し器のことで「蒸篭」と書きます。
昔は、そばを茹でないで、蒸し器で蒸して、その器で売り歩いていたそう。
そのうちに、茹でるようになり、「ざる」 は、文字通り、手頃なざるで提供されたため、そう呼ばれるようになりました。
つまり、せいろで提供しているお店は、メニューが「せいろ」であり、ざるで提供しているお店は「ざる」というわけ。
ちなみに、ざるを上下逆にして盛っている老舗屋もありますが、これは、そばの水分がはやく切れるようにとのこと。
一応、上げ底のためではないようです(笑)。
ところで、つゆにつけて食べるのが面倒だった江戸っ子が、つゆをかけて食べたことから、「かけ」と呼ぶようになり、つけて食べていたそばは、「もり」と呼ばれるようになりました。
なので、何も薬味がないのが、「もり」、のりがトッピングされているのが「ざる」といわれていることが多いようですが、あまり決まりはないようです。
せいろで提供しているお店のメニューの中には、何ものっていないのが「もりせいろ」、海苔がのっているのが「ざるせいろ」と、書かれているところもあります。
ところで、きざみのりがほんの数本のってるだけで、価格が100円も違うのは、どうかと思う私です。
● 二八そばと七三そば。
二八そばについては、二説あります。
ひとつは、そば粉8割に対し、2割のつなぎ(一般に小麦粉、地方によっては、卵や山芋が入ることもあります)を混ぜて打つから、という混合率説。
もうひとつ、実は、「二八、十六」の語呂でそば一杯が一六文だったから、という代価説があります。
実は、二八はうどんにも使われていて、「二八うどん」というものが文献に残っています。
ということは、もともとは代価説が正しいのかもしれません。
現在では、混合率説が使われているようですが、混合率説も、そば粉に対し、20%の小麦粉を加えることも多く、実は、8割対2割というわけでもないこともあります。
ちなみに、参考までに、JASでは乾麺の場合、蕎麦粉3割以上を蕎麦と名乗ってよいことになっています。
つまりは、混合率説でいけば七三そばというわけですね。
● 「きつね」 と「たぬき」、なんでそう呼ぶの?
油揚げを薄甘く煮て入れた種ものを「きつね」といいます。
油揚げがキツネの好物であることから、こう呼ばれています。
稲荷神社(きつねを祭っている神社)に油揚げを供える習慣と同じ理由ですね。
「たぬき」は「きつね」に対してつけられたものかと思っていましたが、実は、揚げ玉とねぎ以外、種らしいものが入ってないことから、「たねぬき」と呼ばれたものが、縮まって「たぬき」になったという説が強いようです。
きつねうどんは、関西がルーツのイメージですが、油揚げをそばの種にしたのは、江戸の方が早いようで、たぬきもきつねも、江戸がルーツです。
そのせいか、関西では、きつねそばを「たぬき」と呼んだり、きつねのあんかけを「たぬき」と呼ぶところもあり、ああややこしい。
そばに関するこぼれ話はつきないのですが、きりがないのでこの辺で。
ところで、うちの近くの、おそば屋さんに、「きつねとたぬきの出会い」というメニューがあります。
もちろん、油揚げと揚げ玉が一緒に盛られています。
これは、あるようでなかったなかなかのヒット。
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