2005年3月15日
Vol.8 続々塩
さて、今回でやっと塩最終回です。前回に続き塩の働きのお話。
④クロロフィルの安定化
野菜の緑色の本体はクロロフィル(緑要素)という色素で、水に溶けないのでゆでても水にさらしても色が溶け出すことはありません。その代わり、長い加熱には弱く、ゆですぎると色あせて褐色になってしまいます。
青菜をゆでるときに塩を加えるのは、塩が、このクロロフィルの安定化に役立つので、退色を遅らせることができるからです。また、これ以外にも、沸点をあげ、短時間でゆでるようにするという理由もあるようですが。しかし、いくら沸点をあげるといっても、湯に冷たい青菜を大量に加えればもちろん温度は下がりますので、少量ずつゆで、ゆでたらすぐに冷ますことが大切です。冷ますときに水にさらすのは、急冷のほか、アクをとるためでもあります。しかし、アクと同時にビタミンなども失われてしまうので(もちろんゆでるときも失われます)、使う目的(彩り、歯ざわり、栄養の重視さなど)を考えて、短時間で加熱し冷まし方を考えるようにします。
この効果も水に対し、1~1.5%の塩分が必要とされています。これは多ければいいというものでもなく、多すぎると、次に説明する細胞膜の分解作用により、青菜が軟化しすぎてしまいますのでご注意を。
⑤植物の細胞膜の分解作用
塩ゆですると、水だけでゆでるよりも野菜が早くやわらかく仕上がります。これは、塩が植物の細胞膜の分解をたすける働きをするからです。玉ねぎをあめ色に炒めるときに、塩を少々加えてから炒めると早くできるのは、塩が持つ脱水作用と細胞膜の分解作用の働きによるものです。ただ、この方法は塩味がつきますのでその後の味付けに注意が必要です。
またこの作用は、野菜のあく抜きにも使われますが、野菜のアクには、それぞれ更に適したもの(ぬかや米のとぎ汁、重曹など)もありますので、補助程度に考えておくとよいでしょう。
⑥防腐・保存作用
塩分濃度を濃くすると微生物の発生を抑制します。腐敗殺菌は約5%の塩分濃度で生育が抑制され、15~30%で繁殖できなくなるといわれています。
塩漬けは保存食であり、例えば元来の梅干は20%以上の塩分があるため、常温でも何年も腐ることなく、お弁当などに防腐作用として入れられていたのですが、最近の減塩の梅干は、8~12%、極端なものだと4~5%の塩分なため、冷蔵庫に入れないと腐るわけです。
これ以外にも、塩は、貝の砂だしをしたり、いちごやあわび、魚などを洗うときに使用したりします。砂だしは、海水程度の塩水をつくるため、塩水で洗うのは、塩の粒を利用して、表面についた小さなゴミやぬめりなどをとるためです。
以上で、塩のお話は終わりです。調味料は、味をつける以外にも様々な働きをしていることが、まずは塩のお話でおわかり頂けたでしょうか。次回は、塩と同じくらい基本的な調味料、「砂糖」のお話をしていきたいと思います。
ところで、砂だし用の塩水は、自然塩を使用した方が、潮を吹き上げる勢いが強く、化学塩を使用すると、砂だしに時間がかかることが、実験の結果わかっています。人間よりも、貝の方が身をもって違いがわかっているようです…
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